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Community-Driven Cartography from Memiro Project

社会的孤立の解消に向けた地図データ、公共データ、セルフトラックデータを活用したコミュニティ主導の地域安全マップ

app screens

制作期間

2022.05 - 2022.10

担当領域

デスクトップリサーチ

コンセプトデザイン

プロトタイピング

ツール・言語

Figma

HTML/CSS

JavaScript

Mapbox GL JS

Observable

アドバイザー

Zach Pino

MEMIROプロジェクト概要

NEC Americaのスポンサーを受け、ウェアラブルやIoTで収集される個人の行動データを用いた社会課題解決のコンセプトをデザイン。文献調査を通じ、現在のデータ活用の問題として企業とユーザー間の信用関係やユーザーの脆弱性に注目し、デザインでどう乗り越えるかをテーマに選定。収集されたデータを活用し個人のウェルビーイングをどう向上させるか、のコンセプトとして、脆弱なユーザーを対象とし4つのケースシナリオを策定

*me miróとはスペイン語で「自分自身を見る」という意味

本コンセプト概要

脆弱なユーザーとして「新しい土地に引越し、社会的に孤立している性的・人種マイノリティ」を想定。セルフトラッキングデータを活用したコミュニティとの社会的な連結を促す例として、コミュニティ主導による地域安全マップ共創コンセプトを提案。犯罪情報などの公共データやコミュニティメンバーによるウェアラブルデバイスを通じた安全情報のインプットに基づき、安全な場所やルートを可視化するモバイルアプリをデザイン。

プロトタイプでは、FigmaによるモバイルアプリのUIに加え、JavaScriptによるMapboxとシカゴ市の公共データを活用した安全マップと、グラフ探索アルゴリズムのダイクストラ法を用いた安全かつ早いルート検索を制作。

結果

最終アウトプットは大学院の次世代型プロジェクトとして理事会で選出。また、大学院の85周年記念イベント「SHAPE SHIFT」のイベントとして一般客にプレゼンテーションとデモを実施

PROJECT PERSPECTIVE

Memiroは、データ活用による自己信頼とウェルビーイング促進を目指す

データ侵害、悪意のある使用、不明瞭なデータ収集の実践、デジタルデータ経済の台頭、監視の恐怖が高まる中、ビッグデータビジネスで考えるべき従来の5V(Velocity, Volume, Value, Variety and Veracity) に加えに6つ目のV、つまりVulnerability(脆弱性)を追加。脆弱な人口は、データ駆動型システムによる権利剥奪の可能性がより大きく無視できない存在。

Memiroプロジェクトは、データ生成者とデータ保管者という2つのアクター間でユーザーデータが流通するように位置づけ。この流れは、データガバナンスチェーンの一部であり、データがフィルターを通過する際に誤解されたり、捉えられなかったり、変更されたり、無視されたりする可能性を認識。データ生成者は人間であり、私たちはデジタルの世界に生きる限り、自分自身についてのデータを生み出すことは不可避である。データ保管者の責任は、情報の流れを統治し、データプロセスを管理し、データ生成者のプライバシーを保護すること。

Memiroプロジェクトは、自己追跡がユーザーにウェルビーイングへの接続を可能にし、自分のデータと関わることで力を与える世界を創造。脆弱な個人が困難な瞬間に自分自身を信頼するようになるシナリオを策定し、コンセプトを提案。

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DESIGN QUESTION

普段、データ提供者本人のために使用するデータを社会的交流に使うとどうなるか?

チームで一般パネル向けに実施したアンケート調査によると、回答者の約70%が本人のためにセルフトラッキングを行っており、家族や友人の追跡を行う人々の約2倍、また、ごくわずかな人々しか他の人々とつながるために使用していない。

Q. 誰のデータをトラックするのか? (複数選択, サンプル数n=186)

自分自身

72.0%

友人・家族・親戚の合計

31.7%

Q. トラッキングを始める動機は? (単一選択, n=157)

トラッキングを行う他の人と繋がるため

1.3%

自分以外の人の健康や行動をモニターするため

1.3%

現状ではニーズが顕在化していないものの、今回の依頼が未来的なセルフトラッキングデータ活用のためのものであること、孤立は社会的な問題になっていることを鑑み、社会的文化的な交流を普段個人向けでしか使われないセルフトラックデータで促進することをテーマに選定。想定ユーザーは「「新しい土地に引越し、社会的に孤立している性的・人種マイノリティ」に設定。

SOLUTION

オンボーディングで所属コミュニティを選択

回答は後にコミュニティ構築の機能で活用。このプロトタイプでは、ジェンダー・アイデンティティが質問項目となっているが、人種、地理的情報、またはコミュニティを形成するその他の属性についても尋ねることが可能。

ユーザー定義による安全指標の作成

オンボーディングのステップの一つで、ユーザーがどの属性が安全または不安を感じさせるか、そしてその程度を把握。スライダーを使って、ユーザーは自分の安全性を細かいレベルで入力でき、アプリはその好みを反映。また、ユーザーは同じコミュニティのメンバーからの安全情報の信頼性も決定。

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コミュニティメンバーによる安全マップ更新プログラム

本アプリは、ユーザーが街を移動する際に安全/不安のシグナルを送ることでリアルタイムにマップを更新できるピアマッピングプログラムを提供。オンボーディングの設定中、ユーザーはウェアラブルでシグナルを送るために使用したいジェスチャーを決定することが可能。また、ユーザーがオリジナルの動作を作成するオプションも提供。

入力に基づいた安全マップと安全ルートの表示

詳細はPrototypingの章を参照

safety map safety route

PROTOTYPING

JavaScriptによるMapboxとシカゴ市の公共データを活用した安全マップ

コンセプトの証明のために、JavaScript、MapBox GL JS、そしてUberによって開発された六角形の階層的地理空間インデックスシステムであるH3を用いて、インタラクティブな安全マップを構築。六角形のセルは全市を覆いその色は安全指数を表す。以下でそれがどのように構築され、どのように機能するかを説明。

プロトタイプのリンクはこちら

safety map on web

DATA ARCHITECTURE

公共データを利用した加重平均安全指標

Chicago Data Portalからいくつかの公共データセットをCSVファイルまたはAPIコールを通じて利用し、安全指数を作成。データセットを取得後、位置座標に基づいてH3の地理空間インデックスを割り当て、同じインデックスに基づいてデータを集約し、集約されたデータをデータ処理のパフォーマンス向上のために0 - 1のインデックスに正規化。各インデックスは、ユーザーが設定できる重みを乗じて一つのインデックスに組み合わせ。一方、ユーザー入力によってデータを集約する「Peer safety report」というレイヤーを作成。

data architecture

VISUALIZATION

地理データの分析を簡素化し、異なるデータセットを組み合わせる際の使いやすさのためH3を選択

H3をシンプルなデータ分析に選んだ理由は、三角形や四角形のグリッドシステムとは異なり、六角形が隣接するすべての点と等距離にあるためであり空間を最適に埋める形状のため。加えて、H3は異なるデータセットを組み合わせるのにも適しており、プロトタイプに最適と判断。

h3 image

INTERACTIONS

スライダーによる要素の重み付け変更

ユーザーが安全要因の重要性を変更してマップをカスタマイズできるようなインタラクションを反映。例えば、警察を信頼していない場合、その重みを減らしてマップがどのように変化するかを即時に観察可能。

ホバーした際に該当地域の安全指標を表示

クリックイベントでピアマッピングによる安全マップのアップデートを再現

セルをクリックすると、その安全指数が色を変えて、コンセプトにおけるピアマッピング機能を再現。これを実現するために、fetchメソッドを使用して入力をGoogleシートに送信し、シートに保存されたデータセットを呼び出し。Googleシートでは、タイムスタンプ、ハッシュ、経度、緯度の4つの属性で構成。

ジェスチャーで安全な場所を報告するウェアラブルのプロトタイプ

安全性に関するリアルタイムフィードバックを物理的なプロトタイプで実証するために、Adafruit QT Py、ジャイロセンサー、そしてGPSセンサーを搭載した電子ボードを構築。QT Py上のLEDライトの色を回転データに基づいて変更するためにCircuitPythonをコーディングし、GPSセンサーによって検出された座標を特定するコードも記述。

ALGORITHM

早くて「安全」なルート検索

時間と安全性の両面を考慮したルートをポイントAからBまで決定するアルゴリズムを開発。これは、GeoJSONデータを使ったルーティングのためのJavaScriptライブラリによるGeoJSON Path Finder(by perliedman)を編集して作成。Path Finderはダイクストラのアルゴリズムを使用して、ポイント間の距離に基づいた最短経路を探索する仕組みであり、安全性を考慮するために、その重み関数に今回作成した安全指数を追加。以下画像はミレニアムパークからシカゴ大学までの迅速かつ安全なルートを示しており、色は六角形マップと同様に安全指数を反映しより安全なものは明るい色を表示している。

安全マップと同様に、ユーザーは最も速いルートか最も安全なルートの重みを変更することが可能。さらに、「Safety Threshold(安全閾値)」を設定し、アルゴリズムが実行される前に安全でない通りをフィルタリングできるようにして、より効率的に。これにより、ユーザーは自分の安全基準に基づいてルートをカスタマイズし、必要に応じて最速ルートと最も安全なルートのバランスを取ることが可能。

別の例では、安全閾値を0.20から0.25に上げ、最短経路の重みを1.0から0.5に下げたときの異なるルートを表示。この変更により、アルゴリズムはより安全性を重視した経路を選択し、その結果、異なるルートを提案。安全閾値を上げることで、より安全でないと判断される通りが経路選択から除外され、最短経路の重みを下げることで安全性をより強く考慮。このアプローチは、ユーザーが特定の条件下での安全性と移動時間のバランスを柔軟に調整できること示す。

NEXT STEPS

  • データ管理システムの構築: ThingSpeakを使用して、デバイスからのシグナルを収集し、フロントエンドに送信するデータ管理システムを構築。このシステムは外部でも機能するかテストの必要あり。
  • 安全性の定義のコンセンサス形成: 安全性の定義についてコミュニティ内での合意形成を促進するために、ワークショップやフォーラムを開催。異なる背景を持つ人々からの入力を集め、安全性に関する多様な視点を反映。
  • ユーザビリティテスト: 対象オーディエンスとのモバイルアプリのUX/UIユーザビリティテストを実施し、使いやすさやアクセスしやすさを評価。フィードバックを収集し、必要に応じてデザインを改善。
  • データの集約と使用: 集約されたデータを都市開発や市民設計の意思決定に活用する方法を模索。この過程で、データのバイアスを識別し、適切に対処するための戦略を考えることが重要。たとえば、データ収集方法や分析プロセスにおいて、多様な視点や経験を反映させることが可能。