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No-way Highway

高速道路がもたらす社会課題の解決に向けた、交通ネットワーク分析ツールのプロトタイプ制作

key shot

制作期間

2021.8 - 2021.12

担当領域

デスクトップリサーチ

コンセプトデザイン

プロトタイピング

アドバイザー

Mark Jones

Zach Pino

概要

自動車業界出身として、高速道路がアメリカの高速道路がコミュニティ同士の分断と生活環境の格差を生み出す一つの要因となっていることや、複数の地方政府が高速道路を撤去しコミュニティの再生を計画していることに着目。データとアルゴリズムで複雑な社会課題を解決する、大学院の自主研究のテーマに選定

取組み

地方政府の高速道路撤去の計画書をリサーチ後、「高速道路撤去による交通網への影響スタディをサポートし計画達成を加速させるか」をゴールに設定し、交通ネットワークの分析シミュレーターのコンセプトと、Pythonを使用した機能面のプロトタイプを作成

CONTEXT

アメリカで高速道路は社会問題を引き起こし、地方政府による撤去は足下で進む

ニューヨーク・タイムズの記事によると、アメリカの都市では33の高速道路撤去プロジェクトが承認され、公式に検討されたり提案されている。これらのプロジェクトの主な目的は、高速道路によって隔てられたコミュニティの再結合と、車両交通の削減である。さらに、2021年3月、バイデン大統領はインフラストラクチャ計画の一環として、高速道路によって分断された近隣地域を再接続するために200億ドルの支出を提案。しかし、近隣地域を一から再建することは、それらを分断することよりも複雑である。私がこのトピックを選んだ理由は、自動車業界で働いた経験があり、自動車によってもたらされる副作用を認識しているだけでなく、複雑な問題に取り組むための計算デザインツールを作成して人々を力づけたいと考えたからである。

SOLUTION

高速道路撤去の影響をシミュレーションして視覚化

  1. 既存ネットワークの分析

    分析対象エリアを緯度と経度のバウンディングボックスで特定

  2. ネットワークデータへの変換

    エリアマップをノード(端点または交差点)とエッジ(高速道路の区間)に変換

  3. 高速道路の除去

    エリア内の高速道路の中から一つ選び、ネットワークから削除

  4. 車両の交通シミュレーション

    スタート地点と目的地をランダムに選び、ルーティングアルゴリズムを実行

  5. ネットワークへの影響の視覚化

    大量の車両の旅行を反復して行った後、左の画像では、線が太く暗いほど交通量が多いことを示す

RESEARCH

交通計画の現行プロセスを理解

Ranchestor市の"Inner Loop Plan"

ANALYSIS&SYNTHESIS

当シミュレーションが交通計画に及ぼしうる効果

  • 交通計画をより効率化

    都市計画者は、従来の方法よりも速く、可能な高速道路撤去のオプションとそのネットワークへの影響を全て確認することができる。これにより、効率的かつ効果的に計画を立て、都市の交通状況を改善するための意思決定を迅速に行うことが可能に。

  • 高速道路撤去後の土地利用の最適化を試みることで、代替的な土地利用の分析とのシナジーを向上

    例えば、都市計画者は、重大な渋滞を引き起こさずに、高速道路を最小限に抑えつつ、開放空間や緑地を最大化することを試みることができる。または、分離する高速道路を撤去することで、疎外された地域を再び結びつけることが可能。

PROTOTYPING

DATA ACQUISITION

高速道路のデータは、世界のオープンソース地理データベースであるOpenStreetMapから取得。JSON形式で、このデータには高速道路の属性(緯度と経度の座標、道路の種類、速度制限に基づく旅行時間など)を含む。

json data

ダラス市のオープンソースデータを使用して、ルーティングアルゴリズムに属性を組み込み。例えば、各道路の安全指数は、市内の警察逮捕データに基づいて計算

Open data of City of Dallas

DATA PROCESSING / ALGORITHM

地理データ処理とルート検索のためにNetworkXとGeopandas、カスタマイズされたA*アルゴリズムを活用

地理データの処理には、ネットワークグラフ分析に特化したPythonライブラリであるNetworkXを使用。プロジェクト用の独自データセットを構築するためのデータ処理と統合には、地理空間データ分析用の別のPythonライブラリであるGeopandasを活用。ルート検索アルゴリズムは、高速で計算リソースを少なく使用するグラフ検索アルゴリズムであるA*アルゴリズムを選び、ルート選択に影響を与える以下の要因を加えてカスタマイズ。

  • 安全
  • 交通量
  • 移動時間見込み
  • 移動の障害となるもの (e.g. 道路工事)
transportation algorithms

Reflection

このプロジェクトを通じて、ユーザーのニーズを計算スクリプトに翻訳することの難しさと、ビッグデータやアルゴリズムを活用して複雑なプロセスを自動化する際の強力な効果を理解することができた。

  • Aaron KoblinのFlight Patternsのような視覚的に魅力的なマップを作成
  • 過去の交通データを入力した後の車両移動シミュレーションなど、機械学習アプリケーションの可能性を探索
  • 高速道路撤去による他の副作用、例えば対象エリア内の車両の平均旅行時間や総炭素排出量などを視覚化
transportation algorithms Flight Patterns by Aaron Koblin